東京都市大学 等々力中学校・高等学校

【行事】校長式辞【卒業式】

行事
2023.03.17

令和4年度 第14回卒業式式辞

校 長   原田  豊

ただ今、卒業証書を授与された卒業生の皆さん、卒業おめでとう。

思えば、3年前の皆さんの入学式は、コロナ禍のため5月に延期の上、リモートで実施するという、異例かつ、誠に遺憾な思いの残る入学式でした。そしてその後も、長期にわたる休校措置で、なかなか高校生活の舞台に上がれないもどかしさを感じたことだと思います。学習の遅れも不安だったでしょう。やっと登校できた後も、心から楽しみにしていた部活動や体育祭や藍桐祭、あるいは2年次のOxfordでの修学旅行なども、中止や縮小を余儀なくされ、恐らく大きな苛立ちや悔しさも感じていたに違いありません。しかし、こうした理屈では割り切れない不合理な現実に対して、皆さんは決してふてたり腐ったりせず、きわめて冷静に対応してくれました。私は皆さんの、この冷静さ、自分で自分の感情をコントロールする「自律性」の高さを、心から素晴らしい思います。そういえば、確かに皆さんはよく自習室を利用していました。この自学自習力、つまり自律性こそ、生きていくうえで最も重要な資質であることを忘れないでください。自分の強み弱みを冷静に判断し、自分で自分を律し、自分で自分を奮い立たせることができる人、そう、都市大等々力で繰り返し教えられてきた、メタ認知能力をこれからも高めていく努力をしてください。

さて、もう一つ、本校が大事にしているものがありました。本校の創立者・五島慶太先生が強調した「熱誠」です。

人生はいつも順風満帆などということはあり得ません。常に、山あり谷ありです。だからやはり最後は「熱誠」なのでしょう。本校ではこれを「困難を前にたじろがない強い心」と解釈していますが、その他に「信念」とか「勇気」「正義」という意味合いも包含している言葉とも思われます。

そこで私は皆さんの卒業に際して、五島先生の他にもう一人、偉大な熱誠の人を紹介したいと思います。

その日本人が活躍した時代は今から70数年前、日本がまだアメリカの占領下にあった時代からようやく占領から脱したという頃で、そんな時代にとんでもないことを成し遂げた一人の日本人の話です。その人の名は出光佐三といって、日本の石油会社を設立した人です。ご存じの人も多いと思いますが、10年ほど前に『海賊とよばれた男』という本の主人公です。彼の凄さは私には桁違いに思われました。単に起業した時の苦しさ辛さに打ち勝ったなどという次元の話ではないのが凄いのです。

ごくごく簡潔にいえば、占領下において、アメリカの石油メジャー(原油の探鉱、開発、生産から輸送、販売に至るまで、すべてを一手に独占している、巨大グローバル企業)が、束になって日本企業をその傘下に組み入れようと襲い掛かってきました。施設を差し押さえ株式を買い占め、その前に日本企業はなすすべもなかった。(日本石油はカルテックス、東亜燃料はエクソン、三菱石油はテキサスへと国際メジャーに飲み込まれていった。)

こうした状況の中で堂々とNOを突き付け、独立を守ったのが出光佐三。「このままあきらめれば国際メジャーの食い物にされる。だから彼らと対等に勝負してみせる。」と言って、先行投資して大型タンカーを建造し、直接アメリカに買い付けに行ったり、メジャーからまた圧力がかかって、アメリカからは買えなくなると、イギリス海軍の攻撃を受けることを覚悟して、イランから買うことを決意し、タンカーをイランへ向かわせたのでした。

私は出光佐三を含め、わが国の偉大な先人たちの事績を見る時、決まって二つの高貴な精神がそこには存在していたと考えています。ひとつは強い信念・熱誠です。もう一つは国家社会の為という精神です。熱誠は多くの人々のために使われてこそ意味がある言ってもいいのかもしれません。

佐三には、品質の良い石油を少しでも安く日本に提供して日本の戦後復興を一日でも早く成し遂げるのだとの思いがありました。彼は後年、自分の行為は国際紛争の種になり得るものであったが、私は日本国民の一人として俯仰(ふぎょう)天地に愧じることはいささかもない(うつむくこと仰ぎ見ること、つまり立居振る舞いに少しも恥ずかしいと思うところはない)と言っています。

企業は社会の公器とはパナソニックの松下幸之助氏の言葉です。ソニーの共同経営者だった盛田昭夫氏も利己ではなく利他こそ大事と言っていましたし。何より本校の創立者、五島慶太先生は昭和14年の新入社員への訓示で、「私を滅して公に奉ずることの必要」や「孔子や釈迦やキリストも、その根本は自己を社会や国家など多くの人のために奉仕させることにある」と語っています。

さて、皆さん、皆さんは今日、本校を卒業して、それぞれが己の専門性を高めるために自らの意志で選択した道を進みます。ここにいるすべての皆さんには、恵まれた能力と環境が備わっています。能力にも環境にも恵まれた者はそれを使い切らなければならない責務があります。だから、怠けず一所懸命研鑽に努めてください。そして、社会に出た後、それらを世のため人のため、国家社会の為に恩返しをしてください。怠けたいとか投げ出したいとか、そういうときには、持ち前のメタを働かせ、そして五島先生や今紹介した我が国の先人の桁外れの、熱誠と高潔な魂を思い出して頑張りましょう。

それでもなお苦しい時があったら、どうぞ迷わずこの都市大等々力の門をくぐりに来てください。母校は、担任はじめ我が教職員は、ノブレス・オブリージュの精神を胸に抱えているものであれば、いつでも皆さんを歓待します。

どうか皆さんこれからの人生でこそ、ノブレス・オブリージュの精神を発揮していかなければならないことをよく理解して、活躍してください。以上をもって式辞と致します。

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