東京都市大学 等々力中学校・高等学校

【入学式】校長式辞

行事
2019.04.07

平成31年度 入学式式辞
校長 原田 豊

 今年の入学式は、春爛漫の穏やかな日和に恵まれ、かつまた、まもなく平成の御代から「令和」へと御代替わりを目前に控えた、まさに記念すべき年の入学式であります。

 加えて本日は、本校の経営母体である、学校法人五島育英会理事長の高橋遠(はるか)様、また前校長で東京都市大学名誉教授の海老原大樹先生他、本校後援会・同窓会、学校評議員の皆様等、多数のご来賓のご臨席のもと、平成31年度東京都市大学等々力中学校・高等学校入学式を行うことができますことは、私たち教職員にとっても、この上ない喜びでございます。ご来賓各位には心から感謝申し上げます。

 また、本日は多数の保護者の皆さまにもご列席いただいております。保護者の皆様には感激もひとしおだろうと存じます。謹んでお子様のご入学をお慶び申し上げます。おめでとうございます。

 さて、ただいま入学を許可された中学210名、高校225名、合わせて435名の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。皆さんを心から歓迎し、教職員を代表して歓迎の言葉を申し述べたいと思います。

 まず初めに、皆さんは本当に本校に入学されてよかった、そう私は申し上げたい。本校の教職員はみんな、生徒一人ひとりに向き合い、皆さんが明るく楽しい学校生活を送るために労を惜しまない教職員ばかりであります。(それは「面倒見のいい学校」として周囲からも高く評価されているところでもあるのです。) また、それは単に教職員が一所懸命に取り組むというだけの話ではなく、皆さんの精神的成長や学力向上などのために、様々なところに目配りをして、多くの具体的なシステムが整っているということでもあります。自学自習力の養成や基礎学力の定着、昨今取り沙汰される思考力、発信力の養成、また英語力やICT技能の伸長、更には新大学入試制度への対応等々、本校の授業、課題、行事などは、皆さんが必死に私たちの指導についていこうとする意志と努力さえあれば、こうした力が自然と身に付くというようにできているのであります。これは年ごとに飛躍を続け、今春もまた大いに結果を残した大学進学実績にも端的に表れていることだと思っています。どうか本校の教職員、及び本校の様々な取り組み一つひとつを信頼し、強い意志をもってそれに取り組んでほしいと思います。

 そこで、今度は私から皆さんへの要望をお話しします。

 今、「強い意志をもって」と言いましたが、これを本校の創立者・五島慶太先生は「熱誠」と呼びました。五島慶太先生は一代で東急グループを築きあげた大実業家です。その過程では、私のような凡人には計り知れない、大きな、そして多くの困難に遭遇し、それに打ち克つために想像を絶するような努力があったことでしょう。そういう慶太先生ご自身の苦難と栄光の生涯から、先生は「熱誠」こそ、物事を成し遂げるために必ず持っていなければならない条件だと強調してこられました。「なあに、これしきの事」と言って逆境に立ち向かっていく強さ、「困難を前にたじろがない強い心」を持たなければいけないということです。

 五島先生は片道12キロの道のりを毎日歩いて学校に通い続けました。しかし、現代は生活全般が便利になった分、逆に昔の人が持っていた強い体力、精神力に欠けるところがあるというのは認めざるを得ない事実のような気がします。だからこそ、皆さんの場合には、否私も含めて、いつも少々のことではへこたれるまい、なあにこれくらいのこと、意識して生活しなければ、「熱誠」を手に入れることはできないと思うのです。

 五島先生の「熱誠」という言葉をいつも頭において勉強を初めいろいろなことに挑戦していこう、入学式にあたってぜひこのことを心に刻んでおいてほしいと思います。

 また、五島先生は「社会貢献」こそ人生の最終の目標であるということをいろいろな機会で何度も説かれました。先生はある講話の中で、「孔子や釈迦やキリストも、その根本は自己を社会や国家など多くの人のために奉仕させることにある」と語っています。本校は社会貢献を「ノブレス・オブリージュの精神」と置き換え、「高潔な若人が果たすべき責任と義務」とは何かを常に心において行動しようと、前進を続けている学校です。そしてこの点にこそ本校が存在する価値も意義もあるのだと思っています。

 よく言われていることですが、世界の人口は約75億人、15歳未満の子供は約20億、うち90%の子供が、戦争、水害干ばつ、あるいは栄養失調や予防接種が受けられないとか、安心して水が飲めないなど、生命の危険に脅かされて生きているということです。また、その90%の子供たちに今一番欲しいものは何か尋ねてみると、答えは何と、学校がほしい、勉強がしたいと答え、おいしいものが食べたい、しゃれた洋服がほしいと答えた子供はいない、という話を聞きました。

 90%とは「ほとんどすべて」ということで、残りの10%とは「例外的」と翻訳してもいいでしょう。さて、そこで皆さんに問いたい、皆さんは命や健康の危険のない「例外的」な世界に偶然生まれ、「ほとんどすべて」の子供たちが手にしていないものをすでに持っている、さらに、彼らが一番欲しているものまで当然のごとくに手にして享受している、この事実を聞いてどう思うか。思いは様々でしょう。しかし、本校が明確に訴えたいのは、だから皆さんは、勉強はもちろん多くのことに真剣に取り組め、決して時間を無駄にして怠惰にふけってはいけない、ということです。つまり皆さんの恵まれたこの環境や才能を使い切れ、そうしなければ世界のほとんどすべての子供たちに申し訳がたたないということです。そうすることが、五島先生の社会貢献、ノブレス・オブリージュの実践の第一歩だということを心にとめておいてください。

 私は小難しい理屈を述べているつもりはありません。

 イタリアの作家、デ・アミーチスという人が書いた『クオーレ』という本があります。エンリーコという10歳の少年が毎日つづった日記という体裁で、ここには今私が述べたような、貧困の中でも決して卑屈にならず、つらい労働の合間を見つけては明日のテストの勉強に励む子供の姿や、大人の不正から得た施しと知った少年が、その大人の前に行って受けた報酬を相手に投げつける、見事なやせ我慢のお話など、卑怯な振る舞いを拒否し世の中とけなげに向き合う少年の姿ややさしさが、作品のここかしこに表現されています。まさに10歳の子供の子供らしいノブレス・オブリージュの姿が描かれているのです。有名な『母を訪ねて三千里』のお話も入った本ですから、もうすでに読んだ人もいるかもしれませんが、これは皆さんの必読の書だと思います。

 話を戻してまとめに入りますが、皆さんがこれから通う、この都市大等々力中学校・高等学校は考えられたカリキュラムを熱心な先生が指導する学校だから、ぜひ信頼し安心して入学してほしい、しかし、皆さんも創立者五島慶太先生の「熱誠」「なあにの精神」をもって弱音を吐かずに学校生活に臨んでほしい、そして、最後にこれからの3年間あるいは6年間は心のどこかにノブレス・オブリージュの精神、社会貢献の気持ちをもって生活し、その第一歩が皆さんの恵まれた環境と才能とを使い切ることから始めよう、ということです。それでこそ都市大等々力生だ、以上が私がこの式辞で申し上げたかった内容です。

 私たち教職員も、新入生のみなさんの高い資質を立派に開花させ、充実した学校生活を送れるよう、全力でサポートをしてまいりますことを改めてお約束し、わたくしの入学式に当たっての式辞といたします。

 本日は、入学本当におめでとうございます。

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